

「叱ったあと、いつまでも落ち込んでいる子どもを見て、自分もつらくなる」

「どうやって伝えたら傷つけずに済むのか分からない」

HSC(Highly Sensitive Child=ひといちばい敏感な子)のお子さんを育てている親御さんにとって、子どもを「叱る」ということは、とても難しく、心の痛むことかもしれません。
HSCのお子さんは、まわりの空気や言葉、表情、声のトーンに非常に敏感です。
そのため、叱られることで強いショックを受けたり、深く自分を責めてしまったりすることがあります。

しかし、叱ることがいけないわけではありません。
大切なのは「どう伝えるか」です。
では、HSCのお子さんの心を傷つけずに、どうすれば伝わる叱り方ができるのでしょう。
それは、
- 感情的にならず、落ち着いたタイミング・環境で伝える
- 人格を否定せず、「行動」にフォーカスする
- 「Iメッセージ」で親の気持ちを伝える
- 問いかけで考える力を育てる
- 小さな前進や気持ちの動きを認める
また、 叱ったあとのフォローはHSCのお子さんにはとても重要になります。
お子さんが安心して気持ちを立て直せるような、フォロー方法をご紹介します。
- 抱きしめたり、言葉で愛情を伝える
- 自己否定に陥らないよう、気持ちを受け止める
- 叱られた経験を行動の変化につなげる
- 自分で整理する時間を持たせる
これらを知ることで、お子さんの気持ちに寄り添える叱り方ができるようになりますよ。

HSCの叱り方に悩むのは当然!

HSC(Highly Sensitive Child)は「ひといちばい敏感な子ども」と訳されます。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念で、人口の20%程度が当てはまるといわれています。
HSCのお子さんには以下のような特性があります。
- 感情を深く受け取る
- 大きな音やまぶしい光に敏感
- 人の表情や声のトーンに敏感
- 空気を読みすぎてしまう
- 想像力が豊かで共感力が高い
このような特性から、同じ叱り方をしてもHSCのお子さんは他の子よりも深く傷ついたり、過剰に反応してしまったりします。
そのため、

「怒るたびに子どもが傷ついてしまう」

HSCにNGな叱り方とは?

HSCのお子さんには、一般的な叱り方が逆効果になることがあります。
以下に、やってしまいがちなNGな叱り方を紹介します。
- 怒鳴る、大声で叱る
- 感情的に責める
- 人格否定につながる言葉
- 他のお子さんと比較する
- 人前で叱る
それぞれ説明していきますね。
怒鳴る、大声で叱る
HSCのお子さんは音や雰囲気に敏感です。
大きな声で叱られると、頭の中が真っ白になってしまい、内容がまったく入ってこなくなります。
言葉の内容以上に、声の大きさやトーンから強いストレスを受けてしまうのです。

感情的に責める
親御さんが感情にまかせて怒ると、その感情をそのまま受け取ってしまい、

「ママは私を嫌いになったのかもしれない」
と感じてしまうことがあります。
それが引き金となって激しい癇癪や泣き叫び、パニックに陥ることもあるのです。
人格否定につながる言葉

「あなた最低ね。」
というように、行動ではなく人そのものを否定するような言葉は、HSCのお子さんにとって深く傷つく原因になります。
存在そのものを否定する言葉は、HSCの自己肯定感を著しく低下させてしまいます。
他のお子さんと比較する

「あの子はあんなに素直なのに…」
といった他のお子さんとの比較は、HSCのお子さんの自信を失わせてしまいます。
さらに、劣等感や嫉妬心を抱かせてしまう要因になるのです。
人前で叱る
周囲の視線に敏感なHSCのお子さんにとって、人前での叱責は大きなストレスになります。

「傷ついた」
HSCの子に伝わる“叱り方”とは?
HSCのお子さんにとって、「叱られる」ということは、「否定される」「攻撃される」と受け取られがちです。
他の子以上に強く心に響きます。
ちょっとした注意でも、自分を全否定されたように感じたり、必要以上に自分を責めてしまうことがあるのです。
叱ることは、お子さんに罰を与えることが目的ではありません。

だからこそ、HSCのお子さんには「叱る」というよりも、「伝える」「一緒に考える」という姿勢が効果的です。
HSCの子に伝わる叱り方を5つのポイントにまとめ、それぞれの理由を紹介します。
- 感情的にならず、落ち着いたタイミング・環境で伝える
- 人格を否定せず、「行動」にフォーカスする
- 「Iメッセージ」で親の気持ちを伝える
- 問いかけで考える力を育てる
- 小さな前進や気持ちの動きを認める
それぞれ説明していきます。
感情的にならず、落ち着いたタイミング・環境で伝える
HSCのお子さんは、感情のエネルギーに非常に敏感です。
親御さんが怒っていると、それを自分への「拒絶」と感じてしまうこともあります。
たとえばその場で

と声を荒げてしまうと、叱られた内容よりも

「嫌われたかも」
という気持ちが強く残ります。
だからこそ、落ち着いたトーンで、時間を置いてから伝えることが大切です。

また、環境も大切です。
大勢の人がいる場所や、騒がしい場所では、HSCのお子さんは周りの刺激に圧倒され、親御さんの言葉に集中できません。

人格を否定せず、「行動」にフォーカスする
HSCのお子さんは、ちょっとした注意でも、

と受け取ってしまうことがあります。

NG:「またあなたはふざけてばかり!」
↓
OK:「授業中に立ち歩いたのは、先生が困っちゃうよね」
この区別をつけることで、自己肯定感を傷つけずにルールやマナーを伝えられます。
「Iメッセージ」で親の気持ちを伝える
「あなたが◯◯したからダメ!」ではなく、「ママは悲しかった」「びっくりした」と、自分の気持ちを主語にしたIメッセージで伝えましょう。
Iメッセージで伝えると、責められた印象を和らげつつ、親の気持ちを伝えることができます。


問いかけで考える力を育てる
HSCのお子さんは深く考えることに優れています。
そのため、

と責めるよりも、

と問いかける方が効果的です。
これは、自分で考えて行動する力を育てると同時に、お子さんの自己効力感(自分にはできるという感覚)を育むことにもつながります。


小さな前進や気持ちの動きを認める
HSCのお子さんは、褒め言葉や肯定の言葉にもとても敏感です。
叱った後でも、少しでも努力した部分、前向きな変化があれば、しっかり認めて伝えることで、安心感と自信につながります。

例:「自分から謝りに行こうとしてたんだね。えらいよ」
例:「ちゃんとお話を聞こうとしてくれたね」

叱ったあとのフォローがHSCには重要

HSCのお子さんにとって、叱られることは「自分の存在を否定された」と感じるほど、深く心に響いてしまうことがあります。

だからこそ、叱ったあとのフォローは、HSCの子育てにおいて欠かせないステップです。

HSCのお子さんは、叱られた内容だけでなく、叱られた「あと」の対応を強く覚えています。

「叱ったあと、ママが優しく抱きしめてくれた」
「叱られても、私のことを好きだって言ってくれた」
そうした体験が、HSCの子の心に、「人とのつながり」や「信頼感」を育てていきます。
- 抱きしめたり、言葉で愛情を伝える
- 自己否定に陥らないよう、気持ちを受け止める
- 叱られた経験を行動の変化につなげる
- 自分で整理する時間を持たせる

それぞれのポイントを詳しく説明しますね。
抱きしめたり、言葉で愛情を伝える
HSCのお子さんは、叱られることで感情が大きく揺れ動き、不安定になります。
そのままにしておくと、

「嫌われたかもしれない」
「もうママは私のこと好きじゃないんだ」
と思い込んでしまうこともあるかもしれません。
叱ったあとに、抱きしめてあげるだけで、

「変わらず愛しているよ」
というメッセージが伝わります。
何も言わず、ただ静かにぎゅっとするだけでも、HSCの子には大きな安心感になります。
また、


自己否定に陥らないよう、気持ちを受け止める
HSCのお子さんは、

「私はダメなんだ」
と、自分を責めすぎてしまうことがあります。
そのときは、

「悲しかったんだね」
と気持ちを言葉にしてあげると、お子さんは安心し、自分の気持ちを受け入れられるようになります。

気持ちに“ラベル”を貼るような言葉かけが、自己肯定感を守る土台になります。
叱られた経験を行動の変化につなげる
HSCのお子さんは、前述したように深く物事を考えることができます。


一緒に考えることで、お子さんは失敗を恐れずに挑戦できるようになります。

自分で整理する時間を持たせる
HSCのお子さんは、刺激を強く受ける分、それをゆっくり消化する時間も必要です。
叱られたあとすぐに立ち直れなくても、「時間が必要なんだ」と受け止めて、そっと寄り添うような対応を心がけましょう。

まとめ

HSCのお子さんは、親御さんの言葉や態度を、表面だけでなく「その奥」にある気持ちまで受け取ってしまうほど、敏感で繊細です。
お子さんを思うがゆえに、強く言いすぎてしまったり、あとから後悔して涙が出る夜もあるかもしれません。

しかし、お母さんのそういった気持ちも、HSCのお子さんにはちゃんと伝わっています。
本来叱るという行為は、「罰する」ものではなく、「大切なことを伝える手段」です。
でもHSCのお子さんには、一般的な叱り方では強すぎることもあります。
だからこそ、
- 感情的にならず、落ち着いたタイミング・環境で伝える
- 人格を否定せず、「行動」にフォーカスする
- 「Iメッセージ」で親の気持ちを伝える
- 問いかけで考える力を育てる
- 小さな前進や気持ちの動きを認める

そして何より大切なのが、叱ったあとのフォローです。
- 抱きしめたり、言葉で愛情を伝える
- 自己否定に陥らないよう、気持ちを受け止める
- 叱られた経験を行動の変化につなげる
- 自分で整理する時間を持たせる
これらをするだけで、HSCのお子さんは気持ちを立て直し、「次はどうすればいいか」を前向きに考えられるようになります。
HSCのお子さんへ伝わる叱り方と、安心を与えるフォローで、お子さんの成長を力強く支え、より良い親子関係、コミュニケーションををとることができるでしょう。